C443話 のバックアップ(No.1)
「……で、フタリしてペアルックなんですね」
「ペアルック言うな」
「もう、ユウヒと私が姉弟なのは知ってるのに。ハニーは冗談も得意なんだね❤️」
「いえいえホンキですよ。よくおニアいですね」
「ありがとう。ハニーもその服、似合ってるよ❤️」
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涼んで頭が冷えた今ならわかる。
ロゴとかがついていないとは言え、店の服で他の店行くのは……失礼過ぎたな。
まあ、店主のアビアンさんが気にしていない様子なのは幸いだが。
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「ごチュウモンはナニにします?」
「海老のビスクカレーの中辛、あとグァバラッシーで」
「チキンカツカレー辛口と……いや、カツカレーだけで」
「ラッシー、とてもオイシイですよ?ツメたいビールもオススメですけど」
「……」
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メニューを見て悩む……振りだけだ。
ビールは最初から選択肢に入っていない。
他の飲み物に比べて高いのもあるが、停電が復旧したら色々とチェックしておきたいからだ。
でも冷たい飲み物は飲みてえよな……。
今度はメニュー表の金額を見て悩む事になった。
高い飲み物は嫌だが、かと言ってウーロン茶とかそういう気分でもねえし……。
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「ユウヒ、待たせてないで早く決めないと」
「なら……普通のラッシーで」
「アリガトうゴザいます、サキにおモちしましょうか?」
「両方同時で」
「カシコまりました、ショウショウおまちクダさいねー」
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そう言ってアビアンさんにウインクをされると、姉貴が笑顔で手を振り返す。
周りの客達が色めき立つ様を見て、あんまり行きたくなかった理由を思い出した。
姉貴とアビアンさんが自然にあんな風に振る舞われると俺だけが変な奴になった気がしてくる。
その上、客達は自分達の飯も食わずに俺達の方を見て会話しやがるし。
こっち見てくるんじゃねえ、見世物じゃねえよ!
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「飲み物頼むなんて珍しいじゃない。しかもラッシーなんて」
「まあ、暑さには勝てねえからな……」
「今まで普通のカレーばかりだったのにチキンカツまで乗せちゃうし。ユウヒ、そんなにお腹空いてたの?」
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姉貴の、子供に対して話しかける言い方に苛つく。
……確かに腹が減っているのは事実だ。
だが、この暑さにバテねえようにガッツリ食べたいという気持ちの方が上だし、何より一番の理由があった。
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「ここのチキンカツ、金額の割にでけえから得なんだよ」
「あぁ……そう……」
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ニヤつく俺とは対照的に、呆れ顔の姉貴。
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「……なんだよその顔は」
「いや……ユウヒらしい理由だな、って思っただけだから気にしないで」
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そう言っているくせに、向けられているのはあからさまな作り笑顔だ。
なんで俺らしいなら呆れられなくちゃいけねえんだよ。