C440話
freeze
夕飯を食べ終わり、汚れた食器も少ない量なので食洗機を使わずに手洗いする。
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「……なあ姉貴、シュウっていつもあんなんだったか?」
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ふと、疑問に思っていた事を姉貴にぶつける。
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「あそこまでは珍しいかな……やっぱりお披露目は緊張するんじゃない?」
「ふうん、そんなもんか」
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俺が食器を洗っているからか、わざわざ隣までやってきて返事してきた。
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「ユウヒも近いうちに、フレアをお披露目しようよ」
「はあ!?……っと、危ねえ!」
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それ言うために近づいてきたのかよ!
姉貴のあまりの発言に、勢い余って手から滑った皿を何とか空中でキャッチする。
本気で割らなくてよかった……片付けが嫌になるし金もかかるし。
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「べ、別に他人に見せる気ではやってねえよ!」
「あんなにかっこいい、って褒めてもらえたのに?」
「……あんなん、ただの暇潰しだよ」
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流水で洗剤を流しながら吐き捨てるように答えを返す。
実際、嘘はついていない。
ただちょっと仕事中にさりげなく挟んだりしたらスマートだよな、とか考えてない訳でもねえけど……。
姉貴もそれがわかっているのか、暇潰しだと主張する俺に対して着替えてまで練習するのか?なんて追求はしてこない。
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「それに……少なくとも、もっと練習しねえと見せられたもんじゃねえし」
「そうやって努力するユウヒは、今でも充分格好良いよ」
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小声だったし水の音でかき消されたかと思ったが、地獄耳の姉貴には聞こえたらしい。
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「姉貴に言われたって何も嬉しかねえよ」
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不快さで思わず口角が下がりながら、洗い終わった食器を拭いていく。
何が悲しくて姉貴に格好良いだなんて言われなきゃいけねえんだよ。
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「そう……ところでユウヒ」
「なんだよ」
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拭き上げた食器をしまい終え、姉貴に振り返ると笑顔の姉貴がいた。
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「ハニー達に見えないからって凄い顔してた時あったよね?」
「あ、いや、それは」
「ハニー達がいる時はそういう顔しない、って前にも言ったよね?」
「でもあいつらからは見えて……」
「ハニーをアイツらなんて言っていいの?良くないよね?」
「……」
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まずい、めちゃくちゃ怒ってるじゃねえか。
いや俺のせいなのはよくわかってるけど別に説教は受けたくないというかなんというか。
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「ほ、ほら!俺風呂入ってくるから!」
「こら、逃げない!」
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階段を全力で駆け上がって姉貴から逃げた。