C430話 のバックアップ(No.1)


ピピピ、と断続的に鳴るアラーム音で目が覚める。

定位置に置く事に慣れてしまえば、何となく手を伸ばしても目覚ましアラームの鳴り響くスマホは手に持てるようになるもんだ。

まだ目がしっかりとは開かないが、時間を確認して……一気に顔が青ざめた。

 

「……マジかよ」

 

寝坊した!と思い一瞬焦るが、日付け部分を見直して勘違いだった事を思い出す。

……そうだ。

今日明日は店休日にしていたんだった。

店休日だからと言っても完全に休めるわけではないからと、この時間に設定した記憶もある。

昨日は閉店間際の忙しさにかまけて酒瓶やらシロップやら適当に並べて片付けを誤魔化していた気がするし、そろそろしっかりと清掃もかけたいところだ。

一度目を閉じてから、気合を入れて起き上がるとスマホの画面を消して尻のポケットに差す。

 

「……あー、よし。うん、そうだ。よく目が覚めたからな」

 

自分が勘違いで焦った事実を誰が見ている訳でもねえのに何となく誤魔化し、洗面所へ向かう。

姉貴が一度だけ使ってそれっきりの洗顔料で顔を洗い、これまた姉貴の化粧水、乳液と顔に塗っていく。

……と、言うよりもだ。

一回使ったらあとはもう使うのが面倒だから、と開封済みの洗顔料達がただただ積もっていく様子が許せないから俺が勝手に使っているだけ、というのが実態だ。

そのお陰なのかなんなのかは知らねえが、俺の肌もやけに綺麗になっている気がする。

姉貴としては捨てるのは捨てるので面倒だから勝手に使っていい、と言うから一石二鳥だ。

俺がメインで使っているとは全く思わずに、姉貴にプレゼントを寄越していく客達には多少は同情するけどな。