C430話

Last-modified: Mon, 27 Jun 2022 23:03:36 JST (691d)
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ピピピ、と断続的に鳴るアラーム音で目が覚める。

定位置に置く事に慣れてしまえば、何となく手を伸ばしても目覚ましアラームの鳴り響くスマホは手に持てるようになるもんだ。

まだ目がしっかりとは開かないが、時間を確認して……一気に顔が青ざめた。

 

「……マジかよ」

 

寝坊した!と思い一瞬焦るが、日付け部分を見直して勘違いだった事を思い出す。

……そうだ。

今日明日は店休日にしていたんだった。

 

店休日だからと言っても完全に休めるわけではないからと、この時間に設定した記憶もある。

昨日は閉店間際の忙しさにかまけて酒瓶やらシロップやら適当に並べて片付けを誤魔化していた気がするし、そろそろしっかりと清掃もかけたいところだ。

一度目を閉じてから、気合を入れて起き上がるとスマホの画面を消して尻のポケットに差す。

 

「……あー、よし。うん、そうだ。よく目が覚めたからな」

 

自分が勘違いで焦った事実を誰が見ている訳でもねえのに何となく誤魔化し、洗面所へ向かう。

姉貴が一度だけ使ってそれっきりの洗顔料で顔を洗い、これまた姉貴の化粧水、乳液と顔に塗っていく。

……と、言うよりもだ。

 

一回使ったらあとはもう使うのが面倒だから、と開封済みの洗顔料達がただただ積もっていく様子が許せないから俺が勝手に使っているだけ、というのが実態だ。

そのお陰なのかなんなのかは知らねえが、俺の肌もやけに綺麗になっている気がする。

姉貴としては捨てるのは捨てるので面倒だから勝手に使っていい、と言うから一石二鳥だ。

俺がメインで使っているとは全く思わずに、姉貴にプレゼントを寄越していく客達には多少は同情するけどな。


時間的に朝飯を食わないと昼までもたねえかもな……姉貴にも食べるか聞こうとしたが、姉貴の部屋の前を通った時には音がしなかったのでやめておく。
客達からのプレゼントであふれかえった、あの汚部屋から音がしないのなら熟睡しているという事だ。
階段を足早に降りながら朝食を何にするか考える。

 

自身を姉貴ほどの面倒臭がりだとは決して思わねえが、自分一人分の食事なんて面倒な調理もそうそうない。
適当に余っていた野菜をみじん切りにして、割った卵とかき混ぜる。
スキレットにバターを落として程よく溶けた頃合いに卵液を流し、その上から食パンを乗せてフライ返しで押し込めて卵液を染み込ませつつ貼り付ける。
具材と食パンがくっついた卵ごとひっくり返した所で。

 

「あ、やべ」

 

起き抜けだからなのか力加減に失敗し、バランスが崩れたパンを無理矢理フライパンで拾う。
ま、まあ客に出す物じゃねえし?
自分にそう言い訳をしながら、微妙に崩れたフレンチトーストもどきを食べる事にする。
手早く食事を済ませて昼飯に食うドリアの仕込みをしながら、視線を回して今日の予定を組み立てていく。

 

「……なんか思ってたより汚れてきてんな」

 

とりあえず簡単に栽培できるので始めたハーブや単に景観用で置いている鉢植え達に水を与えながら、清掃のプランを組み立てていく事にした。