C439話

Last-modified: Mon, 27 Jun 2022 23:18:27 JST (691d)
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「それでコレがフォールンエンジェルね」

「もういい」

 

出されたグラスをほぼ一気に空けると、席を離れていく。

フードも一口二口食べただけで、後は真田がほぼ食べ尽くしていた。

 

「あ、待ってよキッパー!……大成功だったね」

「……本気で言ってんのか?」

「私も成功だと思ったけど……ユウヒは違うの?」

 

何がどう大成功なんだよ。

混乱してくる中、姉貴に手渡される札束。

 

「あ、忘れるところだった、今日の分のお金ね。コレで足りるよね?」

「え?ハニー、こんなになんて多過ぎるよ」

 

渡された枚数も到底理解出来るレベルではなかった。

いくらなんでも多過ぎる。

 

「良いから良いから!キッパー置いてかないで!」

「あ、おい待て!」

 

姉貴の手から札束を半分ほど引っ掴むと、扉を開けた真田を追いかける。

 

「……俺は夢でも見てんのか?」

 

俺が目にした光景についていけずに、ただただ立ち尽くす。

今さっきまでいた二人が空を飛んでる……よな……?

しかもシルエットといい、まるで……。

 

「ユ、ユウヒ!焦るのはわかるけど手を引っ掻くのはちょっと痛かったんだけ……ユウヒ?どうしたの?」

「えっ!?……ああ、姉貴か」

 

呆然としていると、姉貴が声をかけてきて正気に戻る。

 

「大丈夫?もし疲れたなら休んだ方が……」

「いや……多分大丈夫だ」

「そう?なんかボーッとしてたから心配で」

「大丈夫だって言ってんだろ!」

「なら良いけど……無茶はしたらダメだからね」

 

疲れてんのか?……いや、とんでもない見間違いなのかも知れねえし……。

でもどう見ても人間のようには……。

自分の中で納得できる答えが掴めないまま、首を捻りながら店の中へと戻る。

 

「ユウヒ、今日は何か頼むの?」

「頼まねえよ!ちゃんと準備してあるっつの」

 

今日の夕飯は朝飯に使った野菜の更に残りの材料で作ったオムライスと野菜スープだ。

米は仕込みの時にピラフとして炊き上げておいたので、卵で巻くだけで済む。

スープも、面倒臭がりな姉貴でも食べやすいスプーンで掬えるサイズまでスープの具材を切り揃えた。

火の通りも早いので、時間がかからずに済む。

最近似たような飯が多いが、どうせ姉貴は気にしないので問題はない。

 

「姉貴、オムライスにケチャップかけるか?」

「お米白い?」

「バターピラフだから白」

「なら……適当になんか書いておいてー」

「なんだよ適当にって……」

 

別に書くって言われたって、そもそも何を書けばいいんだよ。

……まあ、コレでいいか。

文字を書くような細い口ではないので苦戦しながら、オムライスに文字を書いていく。

椅子に座って項垂れている姉貴の前にスープとオムライスを置いてやり、声をかける。

 

「ほら姉貴、できたぞ」

「うん……せっかく用意してもらったんだし、食べるけど……」

「なんだよ、食うのが面倒でもちゃんと食えよ」

「昔から思ってるんだけど……オムライスに中のご飯書く癖やめなさいよ。バターピラフって書くのは変だよ」

「うるせえ黙って食え!」