誤解もまた枷

Last-modified: Sat, 18 May 2019 22:36:18 JST (1827d)
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「……まさか……ッ!」

 
 

白浜からの電話を切り、慌ててギルドの本部へとテレポーテーションする。

 

視界にまず入ったのは、ソファに横になっているミナギリ、その傍に座る白浜とボウゲツ。

 

……そして、テーブルに寝転がっているババ……神がいた。


「いやぁ、少しばかり遅かったんじゃない?」

 
 

呑気に手を振ってくる女神の襟元に掴みかかり、怒鳴り散らす。

 
 

「ババア!お前ミナギリに何しやがった!」

 

「ぐえっ……何言ってんの?」

 

「何もクソもねぇだろ!?」

 

「いや、何もどころか誤解してるんですけど……」

 

「どこが誤解だよ!」

 

「私は何もしてねぇわ!」

 

「は……?おい、本当か?」

 
 

白浜とボウゲツを見やると、呆れたように首を横に振ってくる。

 

え、違うのか?

 
 

「取り敢えず手離せよクソガキが」

 
 

襟元を掴んだままの手首を握られ、見た目からは想像もつかない程の力で締め上げられる。

 

痛みの余り手を離すと、同時に解放され痛みも消えた。

 
 

「私もあの人間が寝てから来てるんだからさぁ……少しは考えて行動してくんない?迷惑だなぁ……よっと」

 
 

説教臭い言葉を並べながらテーブルへと乱暴に座るババアを無視して白浜に詰めよる。

 
 

「白浜、お前は何をしてたんだ?」

 

「あらぁ?ミナギリさんに勝算があるから眠ってもらっただけよぉ」

 

「……本気か?」

 

「ギルド長こそ何を怒っているのか理解出来ないわよ、私達の目的は夢魔退治よぉ?」


そう言われハッとする。

 

俺は、何を焦っているんだ?

 

解決への最短ルートがミナギリを使う事なら、例えそれでミナギリが死んだとしてもそれがこのギルドの正道だ。

 

ババアを押し退けてテーブルに胡坐をかき、一息つく。

 
 

「……そうだったな」

 

「あとはミナギリさん待ちなんだから待ってあげなさいな……所で、貴女は何の為に?」

 

「私?私はこれから出てくる夢魔の出待ちだから気にしなくていい」

 

「出待ちって……どういう事っスか?」

 

「気にしない気にしない」

 
 

いくらでけぇとは言えテーブルの上で転がり回るなよ……座ってる俺も強くは言えねぇけど。

 
 

「ねぇ、誰かお茶ー……ったく、言わないと茶の一つも出さないとかケチだよケチ」

 

「図々しいババアだな……白浜、特別製を用意してやれ」

 

「私の生肝入り玄米茶ってところかしら?」

 

「ちょっ……そういう茶を出すような奴らって喧伝すんぞコラ」

 

「おいやめろ」

 

「……普通のお茶で良ければ、淹れてくる……っスよ?」

 

「あー優しい人間だなぁ、ああいうのは貴重なんだから使い潰すなよ?」

 

「あらぁ、不死身も貴重ではなくって?」

 

「まぁ妖怪の中ではレア程度ってとこでしょ、そこそこ居るし」

 

「それもそうだけれど、こうもハッキリ言われるとちょっとかなしいわぁ」

 

「白浜をレア程度って……え、何者っスか?」

 

「知らねぇままでいいから早く茶淹れてこい」

 

「そうそう、知らぬが仏……まぁ仏とはちょっと縁が有るけどね!」

 

「私も手伝うわよ」


白浜とボウゲツが茶を淹れにキッチンへ向かうのを見送る。

 

……ダメだ。

 

頭を乱暴に掻きむしり、焦燥感を誤魔化す。

 
 

「果報は寝て待て、って言うだろ?大丈夫大丈夫、人間の欲は果てがないから」

 

「……理解した風を装いやがって」

 

「ふぅん、振りだと思う訳だ?」

 
 

返事が返せない……いや、返さない。

 

真面目に付き合っていたら、いつまでもつけあがってきやがる。

 

だから無視をしているだけだ。

 
 

「いやぁ……この後が、楽しみでたまらんね」

 
 

嫌にニヤついた顔は、俺に向けてなのか、夢魔に向けてなのか。

 

……考えない方がいいな。


「お茶入ったっスよー」

 

「ふたりとも退きなさい」

 
 

テーブルから降りると、盆を置き適当な位置に茶碗を置くボウゲツ。

 

普通俺達に茶碗を合わせるんであって、茶碗に合わせた位置に俺達を座らせるんじゃねぇだろ……。

 

色々な思考を、熱い茶と共に一気に胃に収めた。

 
 
 

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