狂人の欲は際限なく
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「あらやだっ!夢の中で自意識が保てないなんて世話の焼けるお方ですねえええ……でも自分、手伝ってあげちゃいます!う~ん、自分ってなんてイイ夢神なんでしょうっ?最高ですよモルフィウム・パンタイクロイ!……アナタの願い、なんですか?」
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……私の、願い?
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そう、それは……。
「我が、妹……」
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「妹さんですかあ?……ああ、亡くなったとかですかね!想像すればいくらでも出して差し上げましょう!大サービスですよ?ま、誰に対してでもやるんですけども!優しい夢神ですからね」
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「いくらでも……」
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「そうです!いくらでもだなんておトクな気がしませんか?最高ですよね夢の方が良いですよね現実なんてくそくらえですよねえええ!?」
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「なら、我が妹……」
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「はいはい、妹さんですよね?大丈夫ですよアナタの思い考えた姿を完ッ璧に、再現して差し上げますから!」
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「なら……ありとあらゆる可能性の我が妹を!大量に!!!」
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「ふぃう!どういう事おぉ!?」
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空から降ってくる、地から湧いてくる、彼方からやってくる我が妹。
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いや……空も海も山も谷も我が妹。
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そう、世界はその全てが我が妹に包まれるのだ!
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「お姉ちゃーん!」
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「お姉ちゃん」
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「お姉様ー!」
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「おねーちゃーん」
私の元へ集まってくる大勢の我が妹を、腕を広げて受け止め抱き締める。
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なんだか腕が伸びてる気がするけど、我が妹を受け止める為に伸びたんだろう。
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うん、問題は一切ない。
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「いやいやいやいやいや、いくらなんでも多過ぎません?しかも同じ顔の妹ばかりって……幾つ子だったらこんな事になっちゃったりするんですかねええっ!?」
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「1人で無限の可能性、それが我が妹!」
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「はあああ?」
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「ねえさーん」
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「さあ!もっと!まだ足りない!もっと、もっと、もっとだ!!!」
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無限の我が妹を受け止める為には、私は大きくなければ!
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巨大な私に合わせた巨大な我が妹も有りだし……逆に小さな我が妹もいいかな……いや、逆なんてない。
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だって、ここは私の欲望を叶えてくれるんでしょう?
息を大きく吸えば、微粒子サイズの我が妹が私の肺へ取り込まれていく。
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息を吐けば、口から飛び出したり、吹き飛ばされないよう一生懸命しがみついたりしている姿の我が妹も見受けられる。
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うん、やっぱりどんな我が妹も、我が妹である時点で可愛いに決まっているのだ。
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「ちょ……ストップ!ストップして下さいよお!ああ困ります!困りますうううっ!」
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「おねえー!」
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「姉様!」
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「水霧お姉ちゃーん」
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全てが正しく我が妹……ん?悪い我が妹もいいよね。
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うん、全然あり、むしろ有りしかない。
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「ひいいぃぃぃ……やめてえぇ〜!妖力が、妖力が枯渇してしまいますうううっ」
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頭を抱えている夢魔だか夢神だか。
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あっかわいそうだけど我が妹が頭痛持ちって属性も良いな。
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「あぁぁ……せっかく溜めたのに……全部、全部無くなるだなんて……こんな、こんなよわっちい人間一人に……」
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格好によって違う反応する我が妹も欲しい。
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恥ずかしがる我が妹、ノリノリで着こなす我が妹、恥ずかしいけれど私にだけは見せてくれる我が妹、恥ずかしいのを誤魔化す見栄っ張りな我が妹、平常心の我が妹……。
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そうだ、今いる我が妹全部に色んな服を着せてみよう。
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勿論我が妹は追加するんであって、今存在している我が妹に着せる訳ではない。
「も、もうやめて下さいよおぉ!本当にもうまずいんですって!」
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「まだ足りない、まだ、まだだッ!!!」
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お前も我が妹にしてやろうか?
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いや、お前は既に我が妹だ。
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「あああダメだあぁ……こんな筈ではっ、こんな筈ではなかったのにいいい!!!」
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突然、我が妹が白い光になる。
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なんで……?
我が妹に全身を包まれながら、意識が飛んだ。