激減リサイタル

Last-modified: Sat, 18 May 2019 20:13:37 JST (1827d)
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このところ、ライブをしてもなんかお客さんが少ない気がする。

 
 

「まいまい、なにか知らない?」

 

「……ウタコっちは知らなくていい話しかないよ」

 
 

私が大好きなカステラを2人で食べながらまいまいに質問しても、はぐらかされてしまった。

 

まいまいだって、絶対カステラが大好きなはず。

 

だから、とっても美味しいカステラを食べたらてっきり教えてくれると思ったんだけどなぁ。


「だってさ!私がこういう事言っていいのかわからないけど……絶対、絶対お客さん減ってるんだよ?」

 

「何か減るような事したんじゃない?カステラ食べながら歌ったとか……」

 

「ちゃんと飲み込んでから歌ってるよ!」

 

「いや、冗談のつもりだったんだけど……」

 
 

いつも以上に難しい顔をしながらテーブルを挟んで、砂糖を入れたホットコーヒーを飲むまいまい。

 

対面に座っている私は、アイスミルクティーだ。

 

この衣装、肌が出ないのは良いんだけど、動くとちょっと暑いんだよね。

 
 

「ここ数日は、人間じゃなさそうなお客さんも減ってる気がするし……」

 

「なんだって!?」

 

「きゃっ!」

 
 

テーブルをバンッ!と叩いて立ち上がり、大声を出すまいまいに驚いてつい悲鳴を上げる。

 

「ちょ、ちょっとまいまい!」

 
 

叫んだ私が注意していいのかはわからないけれど、周りに迷惑になってるから、と指摘する。

 

まいまいはすみません、と周りに謝ると座り直したけれど、さっきまでとは違い、真面目な顔で質問してきた。

 
 

「……で、人間以外も少ない、ってのは?」

 

「よく来てくれてた妖怪……なのかな?その子達も来てないの」

 

「……ちょっと用事思い出したわ、これコーヒーとカステラ代ね」


「えっ!?ちょ、ちょっとー!まいまいー!?」

 
 

お金を置いて走り去っていくまいまい。

 

コーヒーどころか、私の分のお金を払ってもお釣りが来る金額だ。

 
 

「……今度、お釣りを返さなくっちゃ」

 
 

誰に言うでもなくつぶやく。

 

……あ、そうだ。

 

今度、同じ金額を返すんだもの……今、このお金使っちゃっても、良いよね?

 

店員さんを呼び、追加注文をお願いする。

 
 

「あ、店員さーん、カステラお代わりで!」

 

「申し訳御座いませんお客様、もう在庫が無いんです……」

 

「えぇ!?いっつもたくさん有ったじゃない!」

 

「今後も入荷は一切が未定でして……」

 

「そ、そんなぁ……っ!」

 
 

私の為にたっぷりと注文してるんだよ、と店長さんがいつも嬉しそうに言っていたのに無いだなんて!

 

私と店員さんの声が聞こえてきたのか、店長さんが走ってこちらに向かってきて説明してくれた。

 
 

「あぁウタコちゃん、注文先から連絡が突然途絶えちゃったからさ、俺達も困ってるんだよ……」

 

「え?ここの注文先ってどこなんですか?私、聞いてきます!」

 

「いいよいいよ!それにそんな事お客さんに頼むのは悪いよ!」 

 
 

慌てて止める店長さんに対し、張った胸をバン、と叩いて返事する。

 
 

「大丈夫だよ!それに、私もカステラ食べたいから気にしないで!」

 

「そう言われちゃうとなぁ……ならお願いするよ」

 

「うん!任せて!」

 

「モント・ブラウンの洋菓子店から納入しているんだよ」

 
 
 

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