夢は崩れ現実は有り
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「ここから近いのは……特別森林地区か」
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「降ろして下さいよぉ、それかほどいて下さいっ痺れどころか感覚がちょーっと無くなってきたんですよぉ」
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「ほら高度下げるから口閉じな、舌噛むよ」
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「ちょっ……いたっ木が!木の枝が刺さっいたあいっ!?」
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……なんか、上の方が騒がしいなぁ。
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目をこらしてはみたけれど、よく見えないや。
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隣に居る史徒の肩を叩きながら、もう片方の手で声の元を指さす。
「史徒史徒!アレ、見える?」
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「僕の眼鏡は一体何だと思っているのだね?」
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「え、メガネだけど……メガネじゃないって事?」
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「……雷火、君に聞く僕が間違っていた」
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はぁ、と大きくため息をつく史徒。
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なんでそこでため息つくの!?
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頭の中にはてなマークが飛び交っている間に、上に居たっぽい2人が目の前に降りてきた。
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「おらっ謝るんだよ早くしろ」
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「お尻蹴られるのつらぁい!」
えぇ……。
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いきなり視界に広がる、暴力的な光景にドン引きが止まらない。
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「……何なのだね、アレは」
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透明マントを頭から被ったのか、史徒の姿は見えず声だけが聞こえてくる。
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私だって知らないよ!……と答えようとしたら、破損壊の神様が答えを教えてくれた。
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「あれ?楓とモルモットじゃん」
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「モルモットではなくモルフィウム・パンタイクロイですよ?気軽にモルフィって呼んでください!」
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「じゃあモルフィね、今後ともよろしく」
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手を差し出して握手を求める神様に対して、もじもじと動く……モルフィウム?
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どう見ても縛られてるから握手出来ないよね……。
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ニヤニヤと意地の悪そうな顔をした神様が、指摘する。
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「コア=トル、コイツ握手出来ないから」
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「え?……あ、本当だわ」
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「あと、お前もコソコソ隠れずにコイツの謝罪行脚に協力しろよ……な!」
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「Quax!?」
どうやって見破ったのか、透明マントを剥ぎ取った神様。
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河童語が出てきちゃってる辺り、史徒も物凄く驚いたみたいだ。
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「……お気付きならば致し方無し、最後までお付き合いしましょう」
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「ありがとうございますっこれで早く終わりますう!あー早く解放されたい!ではいきますね自分が今回の騒動の黒幕でして……」
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説明を聞いても、私にはよくわからなかった。
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史徒と神様達がわかりやすく教えてくれた事によると、私はこのモルフィウム、って夢魔に眠らされてたらしい。
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「眠らされてただけならまだしも、夢魔が神様になる踏み台にされかけてたなんて……ちょっとショックだなぁ……」
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「雷火ちゃん……」
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「夢魔に対し、君は無力に過ぎない……気にしていても仕様の無い話だ」
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史徒にぽん、と肩を叩かれる。
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それに対して、破損壊の神様が口を尖らせて抗議する。
「ちょ、ちょっと!私にあんなに何とかしろって言ってたのに何その言い草!?」
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「解決を要望する事すらも否定するとは……いやはや、神という存在は実に素晴らしいものなのだね」
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カッカッカ、と笑う史徒とは逆に、神様二柱はビミョーな顔。
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史徒……もしかして、何か悪いこと言ったんじゃないの?
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「河童の皮肉はどうでもいいんだよ、コイツに何かするか?って話」
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「なにか?」
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「1発くらいなら好きにしていいから」
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「うえっ!?まだ痛いのくるんですかっ!?嫌ですいやですうっ」
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そ、そんな事言われても……私、眠って夢を見てただけだからなぁ。
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内容はうすぼんやりとしか覚えてないけど、楽しい夢だった事だけは覚えてるし……。
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……うん、決めた!
「私は別にないよ、恨む時間も無かったし」
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「ふーん、まぁ考えた結果ならいいけど……河童、お前は?」
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「……1発ならば、本当に問題が無いのかね?」
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「消滅させるとかは勘弁な、あとロープが切れそうなヤツも」
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「……ふむ」
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史徒はモルフィウムに近づくと透明マントを被り、姿を消した。
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何が来るのか、と怯えるモルフィウム。
「……史徒?」
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おかしい。
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もう、5分はたっぷり経ったはず。
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「……楓、逃げられてない?」
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「え?……やべっ本当だアイツ居ねぇ!逃げやがったな!!」
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史徒は透明マントを被ったまま、この場から逃げちゃったらしい。
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「史徒、なにも、したくなかったのかなぁ……」
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「いやそれならそれで言えばいい話じゃね?なんで逃げんのさ」
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「楓が怖かったんじゃないの~?」
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「バッカお前……そんな事ある訳ないでしょ!」
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そう言ってがはは、と笑う神様。
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……ごめんなさい、私もちょっと怖い。
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だって、破損壊の神様に比べて乱暴そうなんだもん。
「はぁ……まぁ、不問って事なんだろうな」
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「……ねぇ楓、私は1発お見舞いしていいの?」
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「いいよ」
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「ちょっと!自分の話なんですから自分抜きで勝手に話を進めいったぁ!?」
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パン、と頬を叩く綺麗な音がした。
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破損壊の神様が叫ぶ。
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「モルフィ!あんたねぇ……限度ってものを考えなよ!?」
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「自分は神になる予定だったんですよ?限度なんて無いに等しい!……に、決まっているではないですか!」
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「私達神だって好き勝手やってる訳じゃないんだからね!?終わり!」
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……好き勝手してるように見えてたけどなぁ。