不審者対処には叫べ
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あれ?アイドルのウタコちゃんが外なのに寝て……倒れてる!?
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誰かわからないけど、ウタコちゃんの前に立ってる。
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うーん、なんか怖そうだし、私ひとりじゃ何もできないし……。
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……そうだ!
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こういう時どうすればいいか師匠が教えてくれてたんだった。
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息をたっぷり吸って、思いっきり大きな声で叫ぶ。
「だ……だれかーっ!!たすけてくださーい!!!」
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私がいっしょうけんめい大声を出して助けを呼ぶと、相手は驚いて私のとこまで飛んできた。
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こ、怖いけど、……このまま、ウタコちゃんを置いてなんかいけないよ……!
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「いいいいきなりなんなんですかこの小娘っ!?もうっ!見世物じゃありませんよっシッシ!」
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「ウ、ウタコちゃんに何をしたの!?」
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「別にアナタには関係無いでしょ……ああ、でもこれで助けに来た方ごと夢に誘えばバッチグー!なんで許して差し上げましょうとも……ねええ?」
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「え……?」
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「まぁこんな弱っちそうな人間でもぉー、無いよりはマシでしょうしい?眠っていただきましょうか!ね!それが良いです!」
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「ゃ……いたっ、はなしてっ!」
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私の頭が、右手でぎゅうっと掴まれて、ミシミシっと音がなる。
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なんかわかんないけど、私、死んじゃうのかな……
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目を強くつむってもっと痛くなることに我慢していると、突然痛みがなくなった。
「そおれさあさあ眠っていただきま痛ったあっ!?」
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「スリートちゃんに何してんだ!」
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「おばっちょりんさん!」
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「助けに来たよ、スリートちゃんはこっちに!……この芹沢陸が成敗してくれるわ!」
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おばっちょりんさんの指差した場所へ走って、物陰に隠れる。
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「よ、く、も!自分の腹に掌底ブチこんでくれましたねぇ!自分はモルフィウム・パンタイクロイ!夢を司る神が夢を拡大して何が問題なんでしょうか!」
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「方法が間違ってるのよ!」
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「自分たち神々に理論めいた事が通用する訳がないじゃないですか!?……そういえばなんで痛いんでしょう?自分には効かない筈なんですけれどもぉ……」
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「そりゃぁよく効くでしょうよ、瑞獣の攻撃なんだから……それに、怪我はさせてないから痛みだけの筈よ」
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「瑞獣ぅ?だからって神話体系の違う上、夢神であるこの自分に攻撃なんて出来る訳がないではありませんかぁ!」
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「ちょっとした属性付与よ」
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「ううううむ、何をおっしゃっているのかわっからないですね……」
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「残念だけどもうあなたの神話体系は看破出来てるの、そしたらその神話に合った生物に習合するだけよ」
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「げぇ!?もうそこまでっ!?思ったよりも早い……よしこれ以上無理に手を出すのは危険な気がしますし今回はやめておきましょう!そうそしてそれが最善!」
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なんだか、すっごくうるさい笑い声を上げて飛んでいっちゃった……。
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私がぽかん、としているとおばっちょりんさんがウタコちゃんを抱えて駆け寄ってきてくれた。
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あ、そうだ!助けてもらったんだから、ちゃんとお礼を言わなくっちゃ!
「ありがとうございます、おばっちょりんさん!私ひとりだったら絶対やられちゃってたし……それに、ウタコちゃんの事、運んであげたりできなかったです」
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「気にしないで、むしろ遅くなっちゃってごめんね……痛くなかった?」
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「ちょっとだけだったから大丈夫です!」
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「……本当は?」
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「……けっこういたかったです」
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「どれどれ?おばっちょりんさんに見せてごらん」
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私が帽子を外すと、片手で髪の毛をかき分けて痛かった場所がどうなってるのかみてくれた。
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痛かった場所が、おばっちょりんさんが触るだけで段々痛くなくなってきた!
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ふしぎだなぁ。
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「うん、幸い出血もないみたいだし、大丈夫そうね」
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「よかったぁ……また、師匠に無茶しない!って怒られちゃうところでした」
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「そしたら一緒に怒られてあげるからさ……さて、この子はどうしたものかなぁ」
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私、この子の家知らないんだよね……と困った顔で言うおばっちょりんさん。
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ウタコちゃんのおうち、私も知らないし……どうしよう。
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二人で悩んでいると、おばっちょりんさんの顔が急に明るくなって私に提案してきた。
「あ、スリートちゃんのお師匠さんに説明したらさ、何日か泊めてあげられたりとかしないかな?」
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「うーん、そしたら大丈夫!……な気がします」
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「確証ではないのね……ま、仕方ないか」
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ウタコちゃんを片手で抱いたまま、携帯電話を取り出してリプレさんと会話するおばっちょりんさん。
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すごいなぁ……リプレさんと、どっちの方が力持ちなんだろう?
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「じゃあね……よし、リプレからお師匠さんに連絡してくれる、って言うからこのまま運んじゃおう」
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「ありがとうございます!」
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「そうだ、スリートちゃん、こっちの手のそばに来られる?」
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ウタコちゃんを抱えてない方の手を振るおばっちょりんさん。
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言われた通り近づくと、私の事も片手で抱え上げられる。
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「このまま飛ぶから掴まっててね、舌噛むと危ないから、口はしっかりと閉じてて」
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「は、はいっ!」
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ギュッと口を閉じてしがみつくと、おばっちょりんさんは助走をつけて一気に飛び上がった。