C47話

Last-modified: Fri, 24 Jun 2022 22:07:08 JST (694d)
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夕飯も食い終わり、飲み物も減ってきたところで呟き声が聞こえた。

 

「トゥヴァンさん、遅いなー……」

 

そろそろ夜も更けてくる頃だ。

最悪警察に……と思っていたら乱暴にドアが開き、ベルがけたたましい音を立てた。

 

「すまんスリート!遅くなった!!!」

 

大声で叫びながら風花の座る椅子まで走ってくる女。

コイツが鳥羽って奴なんだろう。

 

「あ、トゥヴァンさん!遅いですよ!」

「すまんすまん、メシ食ったか?腹減っただろ」

「ご飯は、ハルさんとシュンさんにご馳走になりました!」

「ん……?どういう事だ?」

「あー、俺が説明しますよ」

 

俺が説明した方が早そうなので、掻い摘んで説明した。

 

「私も店をやってるから言うが、代金無料って本気か?」

「……まあ、色々あったんで」

 

主に姉貴のせいでな。

2人に向き直り、綺麗な直角に腰を曲げる鳥羽。

 

「ハルさん、シュンさん、この恩はいつか返す」

「そんなに気にしなくていいのに」

「いや、そうはいかないだろう!何をどう言っても馳走に預かったのは事実だ」

「トゥヴァンさ……ふぁ」

「ほら、風花ちゃんも眠いみたいですし」

「……ありがとう、帰るぞスリート」

「はい……さようなら」

「ばいばーい」

「またいつか」

 

手を引っ張って帰っていく2人。

……たった数分なのに、どっと疲れた気がした。

嵐みたいな女だったな、鳥羽……。