C418話

Last-modified: Wed, 22 Jun 2022 21:34:52 JST (696d)
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「僕たちが一番乗りだ!トリックオアトリート!」

「とりーとー!」

「はい、お菓子どうぞ」

「やったな至!」

「ねー、お菓子いっぱい貰えてお得な日だねー!」

 

別に合言葉とは特にないんだが、ああいう子供達には合言葉を言うという事に意味があるんだろう。

片方は……お化け?ジャックオランタン?と……なんだアレ。

目が大量に体に描かれているが、あんな妖怪なんかいたか?

子ども達に菓子を渡しながら、人だかりへと意識を向ける。

 

「ハニー達、お待たせ❤️」

「アサヒさんのためなら何時間だって待つのは苦痛じゃないな!」

「アサヒさーん!私でーす!」

「ちょっと、私が先ですよ!」

「みんなの分は十分にあるし、きちんと渡してあげたいから……もう少し、待っててもらえるかな?」

「もちろんです!」

「アサヒさんからお菓子貰えるってだけで最高な一日決定なんだから、ハロウィン最高だな!」

「限定メニューもあるからバータイムもよろしくね❤️数量限定になってしまって、申し訳ないんだけれど……」

「今から並ばなくちゃ……絶対に今年こそ制覇してやるわ」

 

あーあー、やってら。

姉貴が常連に囲まれてる間に、暇潰しがてら子供に渡していく。

こっちは暇で楽だな、姉貴と違って菓子を渡すだけだから会計も無いし。

 

「なあなあ、中身見ていいか!?」

「良い……と言うか、友達はもう開けてんぞ」

「美味しそー!ペッポーのはどんな感じー?」

「残念だったな、中身は同じだ」

「えっなら至ちょっと見せろよ……ふ、ふーん!結構美味そうじゃん!」

「でしょー、ペッポーにはあげないからねー」

「おいおい、喧嘩はダメだぞ」

 

あー、このくらいの年の子どもは気楽でいいな。

姉貴じゃねえけど、毎日こんな楽だったら良いのに……いや、俺の事だ。

それはそれで、売上は十分なのかで不安になる事だろう。

喧嘩に発展しそうなので、適当に話題を振ってみる。

 

「ところで何の仮装なんだ?」

「え?え、えーと……そ、そう!ジャック・オ・ランタン様の仮装だ!」

「僕はなんか目玉のやつー」

 

目玉のやつって……クオリティの割に雑だな!

表現がリアル過ぎるってレベルなのにそれでいいのか?

 

「そんな説明なんかしたら、用意してくれた奴が泣くぜ?」

「僕が用意したんだから泣く訳ないじゃんかー」

「自分で用意したなら中々やるじゃねえか」

「でしょー!僕ってとっても凄いんだもんねー!」

「僕はどうだよ!?」

 

なんかオレンジ色を被っておけばいい感が否めないな。

それに本人が言う程にはジャックオランタンにも見えない。

被ってる布以外も、古臭いイメージよりも薄汚いの方が近い。

 

「……お化けかジャックオランタンか、どっちかにしたらどうだ?」

「ジャック・オ・ランタン様だ!って言ってるだろ!」

「はいはい、ジャック様ジャック様。俺は仕事だからそろそろ帰りな」

「他でもお菓子貰いにいこうよー」

「つ、次はお前を恐怖におののかせてやるからな!」

 

どっかのザコかよ。