C412話

Last-modified: Fri, 24 Jun 2022 22:31:35 JST (694d)
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「こちらの席へどうぞ……モーニングを始めて1番のお客様がハニー達で、とっても嬉しいよ❤」

「ハニー!?ハチミツですか!?」

「落ち着いて……確かにハニーはハチミツだけど、そういう意味ではないと思うんだ」

「勘違いするくらいハチミツが好きなら……パンケーキセットとかどうかな?サラダとドリンク、ゆで卵が付くよ」

「ならそれにします!!!あの!ハチミツかけ放題ですか!?」

「えーと……」

 

声がデカいメリットは有るにはあるんだな……サムズアップを姉貴に返す。

ここでケチって評判を落とすくらいなら、好きなだけ使わせた方が結果的に得だ。

先を見て判断しないと、最終的な儲けが減る羽目になる。

 

「かけ放題だから、是非たっぷり使って食べて笑顔を見せて欲しいかな」

「はい!!!!!」

「もう既に最高の笑顔だなんて、口に含んだ時はどれほどの笑顔になるのか……つい、期待しちゃうな」

 

姉貴の浮ついた台詞は無視してフライパンを温めていく。

スフレ程ではないが、小さい物を数枚まとめて焼くためフライパンは大きい物だ。

フライパンが程よく温まった頃合に、昨晩から仕込んでおいたパンケーキ生地を冷蔵庫から取り出す。

生地を火の偏りに気をつけつつフライパンへ落とすと、独特の香りが店内に広がっていった。

 

「ハニーはパンケーキセットに決まったみたいだけれど……そちらのハニーは何にする?」

「えぇと、僕ですか?……このライスピザプレートって何ですか?」

「ピザの生地が洋風焼きおにぎりになったイメージかな、結構ガッツリ目のメニューだよ」

「ではそれで」

「こちらもサラダとドリンクがセットで付くんだけれど、2人ともドリンクは?」

「ハニーレモンスカッシュで!!!」

「僕はアイスコーヒーでお願いします」

「ドリンクは先で大丈夫かな?」

「先でお願いします」

「せんぱい、楽しみですね!」

「ライスピザは初めて食べるから楽しみだなぁ」

 

オーダーメニューの書かれた伝票がカウンターに置かれ、チラリと確認する。

レモンのスライスを漬けた蜂蜜をグラスに注ぎ、レモンを搾って風味を追加。

ソーダを注ぎ入れたら炭酸の泡を潰さないよう気をつけつつマドラーで混ぜ、クラッシュアイスを定量入れて最後にレモンスライスとミントを飾って完成だ。

アイスコーヒーは水出しを昨日の晩のうちに仕込んでおいたので、こちらにはロックアイスを数個詰めてコーヒーを注ぐ。

高脂肪牛乳、特製ガムシロップを小さなピッチャーに注ぎ、トレーにドリンクと共に載せて卓上ベルを鳴らす。

どちらもグラスのギリギリに近いが、姉貴が平然と持っていったのを確認してフライパンのパンケーキを返していく。

 

「お待たせ、ハニーレモンスカッシュとアイスコーヒーだよ」

「ありがとうございます」

「あぁ〜、ハチミツ〜〜〜!!!」

 

「ミルクとシロップはお好みでどうぞ、スカッシュも酸味が強かったらシロップを足せるから気軽に声を掛けてね」

姉貴が接客している間にサラダを作り、片方はボウル、もう片方はプレートに並べる。

硬めに炊いた白米にケチャップを薄く混ぜ込み、セルクルで整形した後トースターへ。

軽く温まったところで取り出し、スライスしたピーマンとトマト、シュレッドチーズを乗せて再びトースター。

 

「良いにおいがしてきた……」

「ピザのニオイって、どうしてこんなに食欲が刺激されるんですかね!!!」

「何でだろうね……あぁ、楽しみだなぁ」

 

フライパンを火から降ろし、何も乗っていないプレートにパンケーキをズラしつつ重ねる。

カットバターを上に乗せ、軽く溶かしつつ蜂蜜のボトルを棚から取り出し……いや、このままボトルで提供でいいか。

バターが溶けてパンケーキから滑りつつある頃にトースターから焼き色のついたライスピザを取り出し、サラダの乗ったプレートに置く。

卓上ベルを鳴らし、姉貴がテーブルへと運んで提供完了だ。

 

「お待たせしましたハニー達、パンケーキセットとライスピザプレートだよ❤」

「おぉ……!ハチミツが、ボトルごと……っ!」

「そんなに目を輝かせるなんて……やっぱり、かけ放題にして良かったよ」

「良いんですか?僕達、常連とかでもないのにサービスしてもらっちゃって……」

「良いんだよ、ハニー達の笑顔のためなら……ね?」

 

何時ものセリフをウインクと共に決め、ターンしながら客席を去る姉貴。

姉貴曰く、ああいう客はある程度放っておいた方が良いらしい……俺には違いが全くもってわからんが。

調理器具を洗い始めると、直ぐにドアベルが鳴る。

手が空いているであろう姉貴に対応を任せよう。

チラリと顔を上げると、既に姉貴は来店客のためにドアを抑えていた。