突然の結界に門番
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歩いていくうちに段々と整備された道になり、完全に人の手が入った道を15分も歩くと巨大な壁と門があった。
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見た限りでは、ここが正門のはずだ。
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「さて……この門の先がホワイトカラーね」
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「お姉様、先程抜けてきた場所……特別森林地区?のギルドでは何故ダメだったのですか?」
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道中、確かにメイの言う通り特別森林地区にも一見三聞は有ったのだ。
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しかし、残念な事にそこの看板には支部であると書かれていた。
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今回、私はホワイトカラーにある本部でなければいけなかった。
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そこで、何としてでも私達を契約させる……そうしなければ、私達が生き残れる道は無いだろう。
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ホワイトカラーも特別森林地区も、今まで聞いた事のない地名な上、一見三聞とやらのギルドだって、全く情報が無い。
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そもそも、今までこんな場所があった事すら知らなかった。
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メイの腹立たしい神からの加護と、私の悪魔からの防壁で無事でいられているが、ここは既にメルトピアでは無いと思っていた方がいい。
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ならば、ここで暮らしていくしかないと考えていた方がいい。
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暮らしていく事を考えたら、以前の様にどこかのギルドに所属して庇護を受ける。
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ついでに交渉次第で衣食住も何とかなるといいけれど……支部があるようなギルドの長ですから、一筋縄ではいかないでしょうね。
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「色々あるのよ」
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不安そうなメイに対し、笑顔で余裕があるかのように見せる……実際、私だって物凄く不安だ。
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契約していた悪魔達が自由に使役出来るなら良いんですけど、色々と。
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「見慣れない方ですね、何方からのお客様ですか?」
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門の前に立っている姿を見る限り、彼女が門番なのだろうか?
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紫のボリューミーな髪をリボンでひとつに縛り、髪よりは若干濃い色の瞳で上から下まで見つめられる。
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女性にしては長身ではあるが、与えられている仕事に対しては余りにも華奢に見える。
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「私達、少々迷ってしまいまして……」
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顎の前に軽く握った拳を置き、一度視線を横に逸らしてから困り顔で相手を見つめる。
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「迷い人には見えませんが」
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相手の顔から察するに、効果が無かったようにしか見えなかった。
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心の中で舌打ちをする。
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「……貴女は、私に近い性質をお持ちですね」
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「わ、私ですか!?」
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メイに対し指を差して突然訳の分からない事を告げてくる。
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「私の知識データの中には存在していない神格からの加護……迷ったという言葉は真実なのでしょう」
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「……」
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「一先ず永世中立国ホワイトカラーにて事態を把握すると良いでしょう、開門致します」
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神格からの加護、という言葉に苛つくが顔には出さずに良かったわね、とメイに声を掛ける。
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メイも、開門されるという言葉に安心したのか緊張が緩む。
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「お名前をお伺いします」
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「堂々聖ですわ」
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「堂々命です」
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「有難うございます」
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深く頭を下げ、起こした後に数歩退くと彼女が目蓋を閉じて何かしらの呪文を詠唱すると足元の地面が光り出す。
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赤と緑のライン状の光が私達を取り囲み、鳥カゴのように囚われる。
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しまった、と逃げ出そうとするも体の自由が効かない……目線だけでもメイに向けると、同じように強張っていた。
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体が動かないなりに警戒していると、閉じられていた目蓋が開き先程迄とはまるで違う視線を浴びる。
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……この魂の芯まで見透かされるような、嫌な感覚。
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神ないしは同格の視線だった。
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「枝垂・アコウ・樹の名に於いて、この者達を正式に受入れるものとする!」
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宣言を受けた直後に私達を取り囲んでいた全ての光が粒子状になり、眩しさで目が眩む。
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崩壊した光達は、粒子状になりやがて空気に紛れていった。
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「扉は開かれました」
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声が聞こえてきて、眩しい中無理矢理目を開ける。
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その視界には、石造りの広い道と喧騒が広がり、先程まで存在していた門も壁も、女性の姿すらも消え失せていた。
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「お姉様、あの方は何だったの、でしょうか……」
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「……わからないわ」
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あの巨大な壁と門が結界で、宣言によって崩壊した?
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それともあの壁と門は幻覚?……いくら思考を巡らせても何だったのか理解が及ばない。
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一体、何が起きたのだろうか。
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呆然と立ち尽くしていた私達に、見覚えのある服装の少女が話しかけてきた。
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「あんた達、誰?」