妖怪は神に非ず
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「いだっ」
顔を無様にも床に打ち付けてしまいました。
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もうっこんな所に床が有るなんて、消してやりましょう……あれ消えない?
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消えないという事は、ここは夢ではないって事で……。
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「……よっ」
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「ヒィッ!?」
近寄ってきたサングラス相手に、思わず盛大に後退りをかます……けれど、うまく手が動かず変な動きになる。
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やだ……私の力、弱過ぎ……?
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いぃや!そんな筈は有り得ません!
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だって、あの人間から全部力を吸い取られたとしても、私にはまだ眠らせているヤツら、つまり妖力の貯蓄がありまぁす!
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「もう皆目覚めたってよ、バカだねぇ……そこまでコントロール出来なくなる前に、アイツを夢から叩き出せば良かったのに」
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「そんな事出来る訳ないでしょう!?そんな力がある訳が」
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「何言ってんの?あんた、神だって言ってたんでしょ……出来ない訳がなくね?」
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「私は出来ないタイプの神なんですっ!私は夢神モルフィウム・パンタイクロイ!私は神、神なんです!」
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「へぇ?だから?」
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「そんな風にゴチャゴチャ文句を垂れたりせずっ私の言う事を聞いていれば良いのですっ!」
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「……へぇ、自由を司る神相手によく言うよ」
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いつの間にか相手の緑と青の双眸が、緑と金に変わっていた。
あれ?
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これ、本当にまずかったりするんじゃ……。
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捕らえられる!
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そう直感した私は、恐怖で中々動かない手足を無理矢理にでも動かして逃走を図る。
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……が、指一本すら動かせなかった。
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いやだ、私はこんな所で負けたくない!
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「神を詐称するしかない雑魚と、しっかりとした信仰を得ている私……どちらが強いかなんて言うまでも無いよなあ?」
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このままでは……このままではっ!
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そう思っているのに、歯の根すら合わずにカチカチと音を立てて震える事しか出来ない。
「はぁ、もう面倒くさいなぁ……無理だし、無駄だから」
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「えっ?」
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「大人しくしてればあまり痛くないよ」
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視界から消えたと思った次の瞬間には、私の襟首は掴まれていた。
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「さて、後は私の仕事だね」
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「協力、ありがとうね?」
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「あいよー任された!……さて、行こうか!」
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「やっやめ……だれか、誰かお助けをおおおお!!!」
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やっと動ける様になったものの、叫ぶ事しか出来なかった。