夢は夢であって現実である筈などがなかった
freeze
「あーマジでショックだわ……面倒事とか本当勘弁なんだけど……っあーもう!」
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「今も無給じゃないですかあ?ほらっ直ぐに自分を解放すれば少なくとも今起きてる面倒な事から逃げるのは可能だと思うんですよっだからさあ解放して下さいよ!」
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「いや、今お前を逃した方が面倒だから」
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フラフラと飛んでる……なんだろ?多分、私達みたいな人間じゃないんだろうな。
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最近、この光景も普段通りだと感じてくるようになった。
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大石さんはまだ無理だって言ってたけど……慣れちゃえばどうって事ないのになぁ。
「……人外だね」
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横に並んで歩いていたまいまいが、ぽつりと呟く。
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その言葉に、目をこらしてよーく見てみると、私がここに来てからの記憶の中でも新しいふたりだった。
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「確か……楓って神様?と……夢神?夢魔?……だよね?えっ、まいまいどこいくの!?」
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夢魔、と聞いた瞬間足に力を入れて空へと飛び立っていくまいまい。
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自分は人外が嫌いなだけの人間だ、って言うけど普通の人間はあんな風に飛んだりできないと思うんだよね……。
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そんな事出来たら、ライブパフォーマンスに取り入れてみたいんだけどなぁ。
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そしたら、奥の方の客席のお客さんにもよく見えると思うんだよね。
「人外め……覚悟ッ!」
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「おいおい危ないなぁ、私に当ててどうすんだよ、まいまい」
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「人外が私の事を気軽に呼ぶなッ!」
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まいまいがいつのまにか手に持って振り回した赤い剣は、神様の片手で抑えつけられてしまっている。
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そのままゆっくりと三人で降りてきて、私の元にやってくる。
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「よぉ」
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「こ……こんにちは」
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殺気を振り撒くまいまい、そんなまいまいの剣を片手で抑えつける神様、何故か縛られちゃってる夢神さん。
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そんな状態の3人が私の元へ来ちゃったら……うん、なんだか周りからすっごく変な目で見られてる気がする。
「元気?」
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「は、はい……」
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「ウタコっちに話しかけるな人外め」
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「別にいいじゃん」
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「良い訳が無いだろうが!まずその手を離せ」
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「面倒だねぇ、まいまいは」
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「あっあの説はどうもモルフィウム・パンタイクロイですぅ、略してモルフィとお呼び下さっあぶない!」
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神様の手がまいまいの剣を離れた瞬間、夢神さんの首元を斬りつけようとしていた。
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間一髪のところで避けた夢神さんが抗議するけど、当たり前だよね。
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「まいまい、危ないよ!」
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「ほら、人外は出来るだけ早く処分しておかないと」
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「そんな事しなくてもいいじゃない!良い人外?の人達もいるよ、きっと?」
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「まぁコイツは悪い人外だからこうして縛られてんだけどね」
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「よし!」
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「何がよし!なの!?ダメだってば!」
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何とかまいまいをなだめて、お話を聞く。
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もう、人外の話になると急に冷静じゃなくなっちゃうんだから。
「それで……私達に、何かご用ですか?カステラですか?」
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「ウタコっち……」
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何故か私に遠い目を向けるまいまい。
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もしかしたら、カステラの用件かも知れないのに。
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「あー……うん、カステラでは無いけど、コイツに何かされたりしなかった?」
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そう言って夢神さんを指差す神様。
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えっと、確か、私は……。
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「この夢神さんに、」
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「夢魔な」
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「は、はい……夢魔さんには」
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夢魔さん、と言い直して続ける。
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夢神さんって言ったらダメだったんだ、知らなかった……。
「直接会ったのかよお前!」
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「はいっ!この夢魔モルフィウム・パンタイクロイ全力で彼女を眠らせてさしあげいててててててて」
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「まいまい!ダメったら!」
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剣でチクチクと夢魔さんを突っつくまいまいを必死で止める。
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そんな鋭いので突いたら痛いに決まってるじゃない。
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「もう!そういうのやめてよ!」
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「私は……ウタコっちを思って……」
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少し離れてブツブツと独り言を言う彼女を無視してふたりと話を続ける。
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まいまいには申し訳ないけど、そうしないと聞きたい事、何も聞けないんだもん。
「このモルフィウム?さんに、夢を叶えてもらったんです」
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「……ふぅん、夢を叶えて、ねぇ……」
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「彼女は素晴らしい素材でしたよええそれはもう!力が無いにも関わらず要求はそこそこの大きさという自分の力になる為に生まれてきたのではないかと思いましたともっ」
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「天罰」
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「いっだあぁっ!?」
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えっへん、と胸を張るモルフィウムさんの背中を回し蹴りする神様。
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なんか、神様が罰を与える時ってもっと神様っぽい罰の与え方するのかと思ってた……。
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「ったく、すぐ調子に乗りやがって……こいつに何か言ってやったり仕返ししたりする事、ある?」
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「仕返し?なんでですか?」
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「コイツの見せる夢は仮初めだよ。あんたの夢がどんな夢かは知らないけど、叶うものじゃ無いから見たんだよ」
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そっか。
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アスカちゃんとは、やっぱり簡単に会いたい!って思ったからって会える訳がないんだ。
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わかってた、わかってるつもりだった。
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でも、やっぱり、少し。
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かなしくてさみしい。
「……だとしたら、会わせてくれて、ありがとう」
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「ありが……とう?詰られこそあれどもこの自分が感謝される謂れなんて自分で言うのもなんですけど全く、ええこれっぽっちも!無いですよ!?」
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「会えない筈だった、人に会えて……私、とっても嬉しかったの」
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「……まぁ、お前が良いならそれで良いよ、私がとやかく言う事じゃないでしょ」
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「やったあ!今回はこれ以上は痛い目には合わないんですね!」
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「いや、アレの事忘れんなよ」
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そう言われてまいまいに視線を向けると、いつもと余りにも雰囲気が違った。
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「……まいまい?」
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いつだってちょっと怖い顔だけど、今はもっとずっと怖い顔だ。
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まいまいがいつも振り回してるギザギザしてる剣だって、落ち込む前は一本だったのに今は何本も持っている。
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すごい、サイリウムみたい。
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「あの、一回だけでしたよね?ね?あんなにくらうなんて事無いですよね!?」
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「一コンボは一回でもいいんじゃね?止めるの面倒そうだし」
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「そんなっ……!」
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「まぁ良いお灸のひとつでしょ、あ、お前は危ないからコッチ来な」
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「ひとり一回って言ってたのに酷いいいい痛ああああああ」
神様が私をワープかなにかしたみたいで、三人とも見えなくなっていた。
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建物の看板とかを見ると、ホワイトカラーの端の方なのがわかった。
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「なんか、あっちから断末魔が聞こえたような気がするような……」
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私のひとり言は、アスカちゃんの居ないこの世界でも、変わらない色の青空に消えていった。