きっとその報告は面白可笑しく改変されている

Last-modified: Sun, 19 May 2019 00:30:43 JST (1827d)
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ぱり、ぱり、ぽり、ぱり、ぱり。

 

炬燵に入り、お煎餅をゆっくりと音を立て食べる永住人さん。

 

表情は暇なんだと主張せんばかりですが、私には永住人さんの暇を潰せるような事は出来ません。

 

そもそも搭載されていないのですから、文句を言われる筋合いもありません。

 
 

「あぁー……ひまあああ」

 

「そうですか」

 

「あ、樹っつぁんお茶お代わり」

 

「承知しました」

 
 

私には神通力も妖力も何も無い為、一杯のお茶を淹れるだけでも永住人さんには待って頂く必要があります。

 

それでも、私に頼むのは何故なのでしょうか。

 

お茶を淹れる度にこの疑問は浮かびますが、未だに私が納得する程の答えは見つかっていません。

 
 

「どうぞ」

 

「ありがとね……あー、暇だなぁ……」

 

「うぃーっす!」


突然現れる人影。

 

永住人さんが、その姿を視認するとほぼ同時に立ち上がり駆け寄ります。

 
 

「楓お帰り!……どうしたの?服汚いけど」

 

「ただいま永住人、樹っつぁん……服?あぁ、気にしないで」

 

「お帰りなさい楓さん」

 

「何かここに用事でも有るのですか?」

 

「え、用事?無いけど?」

 

「無いのに帰ってきたの!?何して遊ぶ?」

 

「やだよ、ガッツリ仕事したから疲れてんの」

 
 

その言葉を聞いて、永住人さんと私が硬直する。

 

少なくとも、私が稼働している間は聞く事が無いと思っていた言葉でした。

 
 

「え……?楓が、本気で、働いたの……?」

 

「神としてだけどね、悪い?」

 

「……働けたんですね」

 

「何言ってんの樹っつぁん!?私めっちゃ働き者よ!?」

 

「そんなしょうもない嘘を樹っつぁんに吐くの、やめなよ」


嘘じゃないって、と言い炬燵に入っていく楓さんと、それを追いかける永住人さん。

 

あぁ、汚れたまま炬燵に入らないで下さい。

 
 

「何してたの?聞かせて聞かせて!」

 

「ちゃんと話すから落ち着きなって、樹っつぁん……あ、いいや」

 
 

そう言って急須から自分の湯呑みへお茶を注いでいます。

 

その急須の中には、お湯は残っていなかった筈なので神通力を使ったのでしょう。

 
 

「……はー、働いた後のお茶おいし」

 

「お煎餅もあるよ、はい」

 
 

差し出されたお煎餅を手に取り、口に含んだ後お茶で口内のお煎餅を流し込む楓さん。

 
 

「その様な食べ方は喉に詰まらせますよ」

 

「大丈夫だいじょーぶ、樹っつぁんは心配し過ぎ」

 

「そんな事より樹っつぁんも楓の報告聞いて!ほらはやく!」

 
 

永住人さんの激しい手招きに呼ばれ、仕方なく炬燵の空いている場所に入ります。

 

楓さんは座り直すと、こほん、とひとつ咳払い。

 
 

「よし、それで何が有ったかと言うとね……」

 
 
 

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