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何だよ、今日は案外忙しいじゃねえか。
何だよ、今日は案外忙しいじゃねえか……。

足元のオーブンの中の様子を見る振りをして、屈んで一息つく。

見えなきゃいいだろ、見えなけりゃ。
客と姉貴に見えなきゃいいだろ、見えなけりゃ。

姉貴が2人に駆け寄り、両手を顔の前で合わせて謝罪する。
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「ハルさん、シュンさん、入店の時から今まで……2人とも本当に申し訳ない!」

「俺は、別に気にしてないんで……」

「いーのいーの、そういう時もあるって」

「いやいや、忙しいからって大切な常連さんや新規さんをおざなりにするような接客は……」

「むしろアサヒちゃんにおざなりにされるの、新鮮味があってお酒進んじゃったし?風花ちゃんも良い子だし!」

「そ、そうですか?」
「そ、そうですか?えへへ、いい子って言われちゃった……!」
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アッハッハ、と大声で手を振りながらの笑みを見る限り、本当に気にしてねえらしい。

だが、接客モードに入っている姉貴がそれで納得する訳もねえ。
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「それじゃ申し訳が……あっ、そうだユウヒ!」
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ほーら来やがった!

姉貴の十八番でありながら、俺の一番嫌いなヤツだ。

客がウンザリしない程度に不快感を込め、顔を上げて返答する。
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「なんだよ姉貴」

「先程のお詫びに、今日の2人の代金は支払い無しって言うのはどうかな?」

「えっ、本当!?あー、美女見ながらタダ酒だなんて最高ー!」

「……良いんですか?」
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姉貴の言う事は間違っちゃいねえ。

間違っちゃぁいねえからこそ、嫌いな提案だ。

ここで嫌だ、と言った時のデメリットを考えると尚更だ。

返答に嫌でもトゲが出る自覚はある。

作業中かのようにうつむき、せめて顔が客に見えないように返答する。
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「まあ、姉貴の言う通りだな」
「まあ、姉貴の言う通りではあるな」

「ほら、ユウヒも良いって言うんだし気にせずに飲んだり食べたりして、ね?❤️」
「ほら、ユウヒも良いって言うんだし、気にせずに飲んだり食べたりして、ね?❤️」
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見ちゃいないんだが想像はつく。
見ちゃいないんだが想像はついている。

小首を傾げながらウインクを決めてる姉貴。

あー想像するだけでむかつく。
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「わー、ありがとうございます!じゃあ何にしようかなー……風花ちゃんは何食べる?」

「え、でも……」

「そろそろお腹もペコペコでしょ?今無料になった分風花ちゃんの分は奢ったげるから」

「でも知らない人からは……」

「もう知り合いだから大丈夫大丈夫!」

「そ、そうなのかな……そしたら、お腹空いちゃいました」

「あーこのくらいの子も可愛い!」

「……風花ちゃん、困ってるから」
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あーきっと何だかんだ言って風花の分も無料になりやがるんだろうなこんちくしょう。
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「あ、アサヒちゃん今日のおススメとかって何?」

「今日のおススメはアヒージョなんだけど、もう食べているなら……チーズカナッペとかはどうかな?風花ちゃんは海老ドリアとか」

「ドリア大好きです!」

「カナッペ、アヒージョに合いそう!んもう、アサヒちゃんはそういうの上手なんだから!」

「私はただ、ハニー達に出来る限り楽しんで帰ってもらいたいだけだよ❤️」

「本当口が上手い!ねぇ、2人ともそう思わない?」

「いや、俺は別に」

「確かに、細かい心配りが凄いよね」

「さっすがシュン、わかってるー!やっぱりプライベートとかもこんな風なんだろうなぁ……」

「ははは……」
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そんな発言乾いた笑いしか出る訳がねえだろ!
そんな発言、乾いた笑いしか出る訳がねえだろ!
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