C419話 のバックアップ(No.2)


そろそろテイクアウトの商品も減ってきただろうし、こっちのお菓子のプレゼントも手が空いた。

物見遊山がてら、姉貴の所へ覗きにいくか。

姉貴を中心にした人の山を、店の壁際を通る事で抜けていく。

 

「姉貴、減り具合はどうだ?」

「ちょうど良いタイミングだよ、補充よろしく……おっと、ハニー!」

 

後ろから押されたのか、飛び出してきたハルさん。

危ないと手を出そうとしたが、シュンさんと姉貴に支えられるのが先だった。

 

「怪我はないかい?」

「アサヒさん……!うん、多分大丈夫!」

「ハルさん、ちょっとこっちへ」

 

姉貴の対応で沸いてる周りを無視して、ハルさんを抱えるシュンさんを人集りからズレるよう案内する。

ハルさんの性格だ、あんな注目された状態なら痛みが有っても正直になんか言えないだろう。

すこし離れた場所で、声を控えめに問いかける。

 

「結構足に衝撃あったと思うんすけど、本当に大丈夫ですか?」

「いやいや本当に大丈夫だから!……あ、でもちょっと足首が痛い……かも……?」

 

無理矢理後ろから押し出されればそりゃ足首くらい痛めるだろう。

本人の様子を見る限り、軽く捻った程度なのかも知れないが、これは俺らの責任だ。

 

「シュンさん、しばらくハルさんと店内で休んでて下さい」

「本当に気にしなくていいから!」

「ハルもそう言ってるし、俺も大丈夫だと思うけど……」

「大事をとると思って下さい」

 

シュンさんが言うなら本当に大丈夫なんだろうが、一応店内の待合席で休ませる事にした。

あー、救急箱はあったか?

……いや、俺も姉貴もろくにけがや病気しねえから、無いはずだ。

ろくに手当は出来なさそうだった。

 

「何も出来なくて申し訳ないですけど」

「こちらこそ、ハルが迷惑をかけて……」

「それは気にしないで下さい」

 

酔っぱらいで同じ事しやがったら蹴り出してやるが、俺達のイベントで怪我した人間をほっぽり出すような真似は出来ねえよ。

2人には申し訳ないが、本当に出来る事なんて大してねえ。

テイクアウト商品の補充準備をしがてら水をグラスに注ぎ、2人の前に置いておく。

 

「お代わり欲しかったらいつでも言ってください」

「俺まで、本当にごめんね……」

「お水ありがとー!」

 

冷蔵庫からテイクアウト用の商品を取り出し、ラベルが剥がれていないかチェックしていく。

幾つかはラベルを軽く抑えて貼り直し、トレーに乗せていく。

 

「ねぇシュン!なんかこのお水美味しくない?」

「確かに……何かいい香りがする」

 

最近緋紗子さんから仕入れたシロップの事だろう。

水に垂らす程度なら食事を邪魔せずに美味いことがわかったので、フレーバーウォーターとして提供し始めた物だ。

 

「あー、最近新しく仕入れたシロップ垂らしてるんで。普段のお冷も入れはじめました」

「ここに通う理由、また増えちゃったわ!お代わりって何杯でもいいの?」

「……飲み過ぎないでね」

 

……今度、シロップ垂らす前と後で何回お冷が出たか計算しておくか。

 

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