C416話 のバックアップ(No.1)


「姉貴ー、看板ここでいいか?」

「もう少しドアから離した方が……うん、その辺りがいいんじゃないかな。あ、そこの黒のオーナメント取って」

「これは最初からここに吊るすつもりだから置いておいただけだ」

「なら仕方ないね、オレンジ色で統一感を出す事にするよ」

今日は閉店日だが、いつも以上に忙しなく動く日でもある。

出すのは日替りメニューの看板ではなく、イベント告知の看板。

「ハロウィン限定!特別メニューでお待ちしております〜仮装して来店された方には小さなお菓子をプレゼント〜」と

毎年恒例の文言が書かれている。

装飾だけで何となくマンネリ化を防いでるつもりだが、来年は何か新しい試みも考えておくか。

「よし、と……こんなもんか?」

「……そうだね、あんまり華美にしすぎても良くないし」

二人で店内、店外と共に見渡して装飾のバランスを確認する。

センスが人よりも有るって自負なんかは無えが、人並には有る……と、思いたい。

「ハニー達は今年、どんな格好で来るのかな?楽しみだね」
「俺は別に気にならねえよ」

どうせ基本キッチンだしな。

「そんな事言わずに、ユウヒも楽しんだらいいのに」
「特別メニューを姉貴も作ってくれるなら楽しめそうだな」
「それは無理なお願いだよ。私がホールに立っていないとハニー達が心配するからね」
「その点は否定出来ねえけど……ほら、閉店後の仕込みとか手伝ったり」
「面倒臭い」

そう返ってくるのはわかっていたが、妙に腹が立つ。
俺がその面倒臭い部分をやってるんだがな!

「じゃ、準備は終わったし……ご飯でも頼もうか、作るの面倒だし」
「俺が今から作るから頼むな!」

宅配を頼もうとスマホを取りに店に戻る姉貴と、それを追いかけていた俺は、既に看板に注目が集まっている事には気がつかなかった。

「……さて緋紗子、ちょっと頼みたい事があるんだけど」
「えー」
「えーじゃなくて」
「だって楓様さ、面倒なのばっかり頼んでくるから嫌だなって声が出ただけだしー?」
「この通行手形を、リストの奴らに回しておいて欲しいんだよね」
「やっぱメンドーな奴!」
「相手の手元に届きさえすればいいよ」
「まー、楓様がやれって言ったらやるしかないし……行ってキマース」
「あいよろしくー」

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