夢からの排出 のバックアップ(No.1)
「いだっ」
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突然ミナギリさんの体から飛び出してきた夢魔。
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同時に、ミナギリさんも目が覚めたようで、周りを見回している。
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「ミナギリ大丈夫か!?」
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「大丈夫っスか……って、今まで寝てたのも起きてきてるっスよギルド長!」
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「あー……そっちの対応に当たるぞボウゲツ!白浜はミナギリを頼む!」
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「わかったわ」
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ゆっくり起き上がったものの、どこに視線を定めるでもないミナギリさん。
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声を掛けて、意識を私に向けさせる。
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「協力、ありがとうね?後はあっちに任せておきましょう」
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「あいよー任された!……さて、行こうか!」
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「やっやめ……だれか、誰かお助けをおおおお!!!」
ズルズルと首根っこを掴まれて引き摺られてゆく夢魔を笑顔で見送る。
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神と嘯く様な妖怪には、あの位の灸を据えなければ理解出来なさそうだもの……頑張ってね?
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「……夢を、見た」
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「そうでしょうねぇ……楽しかったかしら?」
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「我が妹が居たのに……急に消えて……目が覚めた」
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「それは悲しいわねぇ」
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兄弟姉妹という概念が人魚にはない。
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だから、私にはミナギリさんの執着は全くもって理解が出来ない。
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けれど、寄り添う振りくらいは出来るもの……そう、思っていたのだけれど。
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ミナギリさんの次の一言で、私の思考回路は止まってしまった。
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「あんなにいっぱいいたのに……」
「……いっ、ぱい?」
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「大きな我が妹空を飛ぶ我が妹海その物の我が妹私の為に楽器を奏でるもやや下手な我が妹
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それに対しお姉ちゃんにはもっとちゃんとした演奏を聞かせたかったのにと叱る我が妹」
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「全部言わなくても大丈夫よ、聞きたくないわ」
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「水を飲むも口の端からこぼす水の量の方が遥かに多い我が妹私を嫌いと言いつつも私の体を抱き締めて離さない我が妹
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愛想笑いに力が入り過ぎて変な表情になっている我が妹歯が痛くなるも歯医者に行きたくないが為に痛くないと意地を張る我が妹
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ブラックコーヒーを飲むも苦過ぎて涙目になる我が妹頭が良いを自称するも自信満々に言い切った発言が既に矛盾している我が妹……」
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私の制止を一切聞かずに、ミナギリさんの説明は続いていく。
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聞き流したいのはやまやまだけれども、時折聞いているのかと内容を復唱させられるのでそれも出来ず。
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……私が夢魔を誘導したのは事実だけれど、ミナギリさんの事が少し怖くなった。
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